TOKYOちかてつ WALKER・第15回



ここは渋谷区、京王新線

新宿〜笹塚(新宿区・渋谷区)




京王新線路線図

 2007年4月22日(日)12時50分、新宿にやって来た。

 最近新宿に出るには湘南新宿ラインを常用しているが、こいつは新宿駅の随分南寄りに停車する。改札を出るとそこは新設のサザンテラス口で、これが新宿かと思うほど小ぢんまりした小さな駅舎である。見上げると新宿ミロードの壁には大きな星印がペイントされていて、某番組のタイトルを思い出す。ああ、オタクになったなあ…。

 出口の名の由来となったサザンテラスには、地方のアンテナショップが並んでいる。東国原知事の写真が掲げられた宮崎県のショップは押すな押すなの大盛況である。隣の広島県のショップが可哀想になってくる。

 今日たどるのは、新宿から西へと伸びる京王新線。実質的には京王線の複々線、もしくは都営新宿線の一部としか認識されていないのだろうが、独自の線名が付され、ほぼ全線トンネル内を走行するれっきとした地下鉄である。行く先を見渡せば、甲州街道陸橋のスロープの先は延々とビルが連なり、どん詰まりには新宿パークタワーがどどーんと聳え立っている。大都会だなあ、と頷くほか無い景観である。

新町駅跡 そのビル群を暫くたどると、角筈バス停がある。浅田次郎の小説の舞台 になった、古い地名である。もっとも、この辺りの甲州街道は新宿区と渋谷区の境界線になっていて、僕が歩いているのは南側(渋谷区)だから、角筈は向こう側になる。いずれにせよ界隈のビルはどれも、角筈も渋谷さえも無視して「新宿」を冠した名前を付けている。ファミリーマートだけが愚直に、「代々木二丁目店」と地名を守っていた。

 その先に甲州街道が、無意味に南側に膨らんだ地点がある。ここは京王線新町駅の跡らしい。廃止されたのも道理、わずか50歩戻った所に新宿駅の入口がある。もっともこの入口、ホームまでは相当に遠そうだが。

 続いて右側には、文化服装学院のこれでもかと言わんばかりの大ビルが現れる。目の前のバス停は、都バスが「文化服装学院前」、京王が「京王プレッソイン新宿前」と張り合っているが、どちらが目立つかは一目瞭然である。ちなみに建物内には「文化学園服飾博物館」が併設されているようなのだが、その英語名は「COSTUME MUSEUM」。まったくもって直訳で正しいが、別の展示内容を妄想しかねないネーミングではある。

 服飾学院を過ぎると、甲州街道から不自然な角度で右へ分岐する小道がある。家々はみな、この道に背を向けて建っている。かつてはこの地点で、京王線が甲州街道から専用軌道に移ったのではないかと思う。

 小道に足を踏み入れてみる。路傍には排気口があって、電車の走行音が聞こえてきた。もっとも位置的に、これは新線ではなくて西口から出て笹塚までノンストップで走る京王線の音ではあろう。京王電鉄の変電所が、かつてこの地上に電車が通じていた事を静かに示している。

 旧線跡は緑道に変じ、やがて広い公園へと差し掛かる。区長選挙の掲示板に「しがらみのない唯一の候補」と大書した宅八郎のポスターが貼ってある。そうか、ここ渋谷区だったよなと改めて思い知る。どうもこの辺り、渋谷区という認識が薄い。新宿か中野、下手をすると杉並辺りと勘違いしかねない。

 建設中の首都高速中央環状線が前方に現れた。4号新宿線との絡まり具合は、幾何学的で美しささえ感じる。しかし直下の甲州街道を歩いてみれば、やはり薄暗く排気ガス臭くいただけない。新国立劇場前のバス停ポールが建っているが、こんな所でバスを待ったら気分も醒めてしまいそうだ。

 13時20分初台駅着。国立劇場等のイメージからすれば随分庶民的な駅前で、ラーメン屋さん等が軒を連ねている。緑道も先程までと比べて随分人通りが増えた。程なく富士急行本社の裏を通過。昔、就職活動に来た場所だ。面接官のウケが随分良かったが、あのまま続けていれば受かったのかどうなのか。それはともかく、京王線(本線)はこの場所から地上に出ていた時代があるようだ。面影は何も残っていない。

 緑道に面して幡代小学校があり、「明治15年創立」と由緒を誇っている。チワワの散歩をしている女性がいて、あまりに可愛いものだから他の通行人と一緒に存分に撫で回してしまった。まだ生後2ヶ月とのこと。

 甲州街道と緑道ばかり歩くのも芸が無いので、南側の住宅街に足を踏み入れてみる。マンションや住宅がびっしり建て込んで、思いのほか下町的である。ただし随分起伏が激しい。これも予想外であった。黄色い看板の小さなエステもあり、これは渋谷区らしい(気がする)。

 スポーツセンターの広大な敷地を眺め、甲州街道方面に戻り始めると緑道と交差する。ただしここの緑道は、京王線ではなく玉川上水の跡地らしい。両者の関係は渾然一体としているように見えて、どうも僕には良く分からない。というより、調査不足で来てしまった感はある。

笹塚付近 甲州街道至近まで戻ってビルの1Fを潜り抜けると幡ヶ谷駅で、13時 40分着。ここも初台と同様に賑やかな駅だ。駅前のパン屋さんの下、相当浅いところに京王線が走っていて、裏手からすぐ地上に顔を出すことになる。ただし、パン屋下を通過するのは京王線の上り1本きりで、下り線と京王新線は暫く先まで地下のままである。北側の甲州街道直下が新線、南側の緑道直下が京王線のいわば路線別複々線だった地下区間に対し、次駅笹塚は方向別ホームとなっている。新線を乗り越すために、京王線上りだけが先に上がってくる構造になっているわけだ。

 にわかに強くなってきた向かい風に吹かれながら、上り線に沿って歩く。既に残り3線は直下に入っているようで、道幅はばかに広い。甲州街道との間に1ヶ所踏切があるが、都心の過密線区で"単線"の踏切ってのは随分シュールな眺めである。

 やがてトンネルは尽き、4本の線路は一体になって笹塚駅へ駆け上がる。甲州街道に戻って排ガスにまみれながら進んでいると、繁華街にはすぐにたどり着いた。14時笹塚着。京王といえばここ、と言わんばかりにC&Cに直行して昼食とした。


(つづく)

2007.7.8
Copyright(C)tko.m 2007

埼玉高速線へ  りんかい線へ  お散歩ジャーナルへ  MENUへ