[PR]今日のニュースは
「Infoseek モバイル」

今度 の旅はレアバスで・第18回



雨の西湘、バスは往く

箱根登山バス (系統番号なし) 湯 河原駅→小田原駅


湯河原駅にて

 小田急電鉄が発行している企画切符に、「箱根フリーパス」というものがある。沿線住民や箱根を車以外で観光したことのある人なら、誰でも名前くらいは知っているヒット商品だ。登山電車・バス・ケーブルカー・観光船と、箱根のあらゆる乗り物(ただし小田急系限定)が乗り放題になる、優れものである。

 この切符のフリー区間図を眺めると、小田原から湯河原まで箱根登山バスが走っている事が分かる。さすが箱根の盟主・小田急グループ、箱根の表玄関である小田原と裏口(元箱根へ登るバスがある)の湯河原とを結ぶラインは、JRに頼らず自力で確保しよう、という算段な訳だ。何台ものバスが観光客を満載して行き来しているのだろう。誰しもがそう思うところである。僕だって子供の頃はそう思っていた。

 ところがどっこい、この系統はちゃっかりとレアバスなのである。運行本数たるや、1日わずか2往復。しかも土曜は1往復、休日運休とものの見事に先細って行く。理由は分からなくも無い。とにかくこの区間、混むのである。東京から伊豆に向かう観光客が、小田原厚木道路や西湘バイパスを降りて片側1車線の国道135号線にどっとなだれ込むのだ。途中の石橋ジャンクションは、国道1号原宿交差点と並び立つ神奈川県内屈指の渋滞ポイントである。定時運行など出来る訳が無い。

 ゆえにいつの間にか、国道135号線を走るバスは観光客の来ない平日・土曜の朝だけになってしまったのである。今日(2007年7月7日・土)はこのバスに乗るために、早起きをしてきた。


 バス乗場の屋根を、雨が激しく叩いている。木々はもやに覆われ、湯河原駅頭はさながら深山の小駅の趣を呈していた。なんでこんな悪天の日に来てしまったのかとも思う。

 和菓子屋さんの前に止まった小田原行のバスは低床車で、中に入れば2人掛けのリクライニング座席がずらりと並んでいる。レアバスなのに随分良い車を使っている。しかしもちろん先客はいない。運転手は車外で、所在無げにタバコを吸っている。

 8時45分、定刻通りバスは発車した。市街地の中を、海に向かって下っていく。次のバス停で1人、2つ先でも1人乗車があり、ここで国道135号線にぶつかって左折する。角にはコナカやすき家等、およそ湯河原には相応しくない店が並んでいる。パチンコ屋の向こうに、海が見える。

 程なく道は二股に分かれるが、分かれたまましばらく併走する。線路別複々線のような不可解な構造である。どちらも真鶴道路で、海側が新道、バスが走る山側が旧道である。新旧ともども、下り線は早くも混雑し始めている。吉浜バス停のポールには、なぜかTシャツがかぶせてある。

 やがて旧道は海岸を離れ、真鶴駅へと登り始める。ここに旧旧道と呼ぶべき一般道との分岐があり、湯河原・真鶴間の区間便は旧旧道へと折れるのだが、我がバスは直進してしまう。そんな細かい所で経路を分けなくてもいいのに、と思う。大抵の道路地図はここから先を有料道路としてあって、初めて知った時は「お金を払わないと駅前に入れないのか」とショックを受けた。実際には、料金所 は随分先にあるので問題無いのだ。

 8時57分真鶴駅着。途中から乗った2人はここで降りてしまう。ここからがいわば本番で、根府川の先まで(土曜に限れば、早川を渡るまで)このバスしか走らない区間となる。当然、乗り込む客はいなかった。

 真鶴駅を出たバスはしばらく東海道線と併走したあと、ぐるりと180度以上回って向きを変え、上り坂にかかる。雨に濡れた木々の間を抜け、短いトンネルを越えると、後方に真鶴半島が見える。雨に煙って、半島先端は全く見えない。程なく料金所で一旦停止。ここだけでもコスト高な路線なわけで、採算はどうなっていることやら。

 新道が合流すると、バスは海岸べりをひた走る。本来は絶景であるのだが、今日の海は真っ暗だ。こんなに陰鬱とした相模灘を眺めるのは久し振りだなと思う。沖に出た漁船に、ぽつんと明かりが灯っている。崖がストンと海に落ちる地形だから、人家はほとんどなく、従って人通りも無い。見覚えのある団体客向けドライブイン(渋滞の中、家族で入ったら迷惑がられた)も、今日は空っぽである。

 東海道線はといえば、地図上はほぼ併走しているのだが、崖の中腹に張り付いており車中からは全くと言っていいほど見えない。ようやく前方に赤い鉄橋が現れた。白糸川橋梁に違いなく、さすが堂々とした佇まいである。なおも走ると旧旧道が合流し、米神という集落が現れて3人の乗客があった。集落の奥を新幹線がゆっくりと横切っている。小田原駅まではまだ距離がある。大雨徐行だろうか。

市民会館前バス停(下り) 次の石橋集落を過ぎると、どうやら険路は終わりとなり、家並が続くようになる。早川では駅で降りる人もいたが、女性ばかり6名も乗客がある。随分営業路 線らしくなってきたが、この区間、土曜日の今日はこの1本しかバスが無い。小田原発はすでに「終バス」が出た後で、駅がある早川の住民はともかく、米神の人はどうやって帰るのだろうと思う。

 魚屋等が並び漁港の雰囲気を漂わせる街並みを抜けると、川を渡って国道1号線に合流する。道幅は広く、よく整備されているが、それでも宿場町の雰囲気はそこかしこに残っている。さすがは城下町である。黒ずんだ旧家の前を左折すると小田原駅へ向かう道となり、9時25分市民会館前着。ここから先は随分前に乗った事があるので、下車する。目の前の料亭に見覚えがあった。

 ちなみにこのバス、渋滞には全く巻き込まれなかったが8分遅れていた。


(つづく)



2007.8.18
Copyright(C)tko.m 2007
第17回へ   第19回へ   お散歩ジャーナルへ   MENUへ